日時

令和3年12月28日(火曜日)

会場

狛江市役所 市長公室

出席者
  • 狛江市長:松原 俊雄
  • 狛江市医師会長:片山 隆司(かたやま内科クリニック)
  • 東京慈恵会医科大学附属第三病院副院長:平本 淳


(左から松原市長、片山医師会長、平本副院長)

座談会
令和3年のコロナ禍を振り返って

松原市長
 本日は、年末のお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。新型コロナワクチンに係る三者座談会を始めます。市でもこうした試みは今回初めてになります。大変貴重な機会ですので、医療従事者としてのお立場からお話を伺ってまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

片山医師会長
 三者が協働していることが市民の方々に伝わると良いですね。

松原市長
 令和3年は、年明けの1月8日から延べ8カ月、実質1年間の3分の2の期間にわたって、東京都に緊急事態宣言が発出されました。また、8月には先生方も大変ご苦労されたと思いますが、全国的に一気に感染が広がり、狛江市でも7・8月は新型コロナの感染者数が大きく増えました。そんな中、狛江市医師会、東京慈恵会医科大学附属第三病院(以下「慈恵第三病院」)の皆様には、様々なご対応をいただきました。改めてお礼申し上げます。

 こうした厳しい状況下で、感染者対応をはじめ、発熱外来、PCR検査等も行っていただきました。また、新型コロナに感染し、入院された方も増え、その対応を慈恵第三病院には担っていただきました。市民の皆様にとっても、この間、不要不急の外出自粛などを余儀なくされてきたことと思いますが、おかげさまで現在はだいぶ落ち着いています。
 まずは、この1年間を振り返ってみての所感をいただければと思います。

片山医師会長
 
コロナ禍と言われるようになって2年が経ちました。最初の1年は本当に手探りで、我々医師会も新型コロナは恐いというイメージがあり、不安感や緊張感が漂っていました。そうした中で何ができるかといったところからはじめ、まずはPCR検査センターを立ち上げ、とにかく市内で検査体制を充実させて、基幹病院である慈恵第三病院になるべく負担をかけずに、医師会内でしっかりと検査をしていくことを目指しました。今年はワクチンという武器が手に入りましたので、私としては、どれだけ医師会が狛江市民の方々へ、広く安全にしっかりとワクチン接種をしていくということが一つのテーマでした。

 市民の方々もニューノーマルの生活スタイルがかなり身についてきて、ライフスタイルも変わりましたが、少なくとも狛江というスモールタウンの中で、市の周知や広報も非常に充実していましたし、市民の方々も毅然とワクチン接種を受けてくださいました。このワクチン接種をしっかりと頑張れたおかげで、狛江市の中での感染の収束を迎えることができたというのが今年1年を振り返っての実感です。

松原市長
 
ありがとうございます。平本副院長いかがでしょうか。基幹病院として大変だったかと思います。

平本副院長
 今年1年は、コロナの波でいうと1月の第3波、5月がピークの第4波、8月がピークの第5波がありましたが、慈恵第三病院として何といっても一番きつかったのは第3波のときでした。あの時はワクチン接種も始まっておらず、薬についてもそれほどたくさん揃っていませんでした。また、残念ながら院内でも感染者が出てしまい、これに伴って外来の制限、救急受入れの停止、入院もできるだけ抑えなくてはならないなど、医療ニーズに応えることが難しくなっていました。

 第3波のときはご高齢の方がまだワクチンを接種していない状況でしたので、ワクチン未接種の高齢者の感染が多く、さらには重症化する方も増えるといった状況となってしまいました。慈恵第三病院としてできる限り感染を防ぐため、当時としては手を尽くしてきたつもりでしたが、それでも感染が発生してしまいましたので、さらに厳しい体制を取ることとし、現在は都内の病院でも有数と言えるくらい厳しいチェックを入院等の際に実施したことで、以来、院内の感染はほとんど発生していません。

 その後、ご高齢の方のワクチン接種が進んできたわけですが、第4波、第5波のときは、確かにかなりの患者数を受け入れたものの、ワクチン接種の効果なのか、年齢的に若い方の感染が多くなってきたことや、新型コロナウイルスの発生から約1年半が経過して、治療薬やマネジメントの知識がしっかりしてきたので、以前のような混乱はなく、医療従事者側として非常に落ち着いて対処できた印象です。今後、第6波が来るかもしれませんが、これまでの知識、経験を活かして適切に対応していきたいと思っています。

 

1・2回目接種総括

松原市長
 ありがとうございます。それでは、本日のテーマ、新型コロナワクチンに移ります。いよいよ追加接種、3回目接種が始まります。市でも片山会長と様々に意見交換させていただきながら着々と準備を進め、ほぼ体制が整ってきたところです。ただ、現在は、国から「前倒し接種」という話が出てくるなど、刻々と変化する状況に対応するため、市の舵取りも非常に難しくなっています。新たな情報や動きが出てきた際には、またご協議させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 「1・2回目接種の総括」と「3回目接種、追加接種」に分けて、お話を伺っていきたいと思います。
 ワクチン接種については、おかげさまで全国でもトップレベルの接種率を獲得できました。また、以前の狛江市新型コロナウイルス感染症専門家協議会において、片山会長、平本副院長からご意見、ご提案をいただいています。特に「若者への接種がまず大事である」というご意見をいただいた際は、これを「SAVE KOMAE PROJECT」という若者の接種率向上に向けたプロジェクトの立ち上げにつなげるなど、しっかり対応させていただきました。もちろん先生方にも大変なご尽力をいただいたことで、こうした結果が得られたものと思います。ありがとうございます。
 それでは1・2回目接種を終えてのご感想をいただきたいと思います。片山会長いかがでしょうか。


片山医師会長
 本当に接種率がすごく高くて良かったと思います。我々がまず重視したのは、接種目標値をある程度決めておくことでした。というのは、接種開始当初は国から狛江市へのワクチン供給時期が遅く、他市に比べて遅いスタートとなったため、何とか接種のスピードを上げて広く接種していかなければならない、また、風邪が流行する時期、インフルエンザが流行する時期など、冬場に向けて接種をある程度終わらせておきたいという思いがあり、そのためには、目標値を決めておかなければならないと思いました。そこで、高齢層(60歳以上)90%、中間層(40・50歳代)80%、若年層(30歳代以下)75%は絶対に達成したいと考えていました。この数値は、インフルエンザワクチンの接種において、このくらいのパーセンテージで接種できればインフルエンザの流行を押さえ込むことができるというもので、私たちと市で相談し、最終目標として10月中には接種を完了したいねという話をしていました。

 また、医師会の中で個別接種できるクリニックはそれほど多くなく、個別接種を受け入れるには限界があったため、まずは集団接種会場で一気にご高齢の方の接種を進めていこうと考えました。他市では個別クリニック接種からスタートしたところもありましたが、我々はとにかく重症化リスクの高いご高齢の方をいち早く守っていくという意味も含め、集団接種会場で一気に接種を進めていきました。

 ただ、本当に良いスピードで接種は進みましたが、先ほど市長もおっしゃったとおり、若年層の接種率が、途中からいまいち上がってこないという課題が出てきました。そこでもう一度、市と相談して9月からの「SAVE KOMAE PROJECT」立上げとなったわけです。駅前の予約不要接種、ポスター掲示、ポータルサイト開設、ノベルティグッズの配布、ダイレクトメールの発送など、色々な取組をこれでもか、これでもかというほど行って、最終的には若年層の接種率が80%を超え、中間層も88%近い接種率となりました。若年層の接種率をここまで獲得できた自治体は、ほとんどないのではと思うくらい若年層を救うことができたという実感です。

 狛江市の1・2回目接種の勝因は、段階的にどこに力を入れるかというところを、時期に応じてきちんと明確に定めていったこと、あとは、それに対して市の方々が協力的に、常に柔軟に対応していただいて「この時期だからこういうことができるんじゃないか」「ここはこう変えたらいいんじゃないか」など、風通し良く相談しながら最後まで進むことができたことだと思っています。

松原市長
 片山会長のクリニックに、市の職員が何度もお邪魔して、その都度貴重なご意見やご助言をいただきました。ありがとうございます。

片山医師会長
 相談する度に「もっと若者向けにはこうしたら」「もっと高齢者にはこうしたら」「こんなことをやったらいいかもね」という案を出し合いましたが、市はすぐ形にしてくださいました。また、集団接種会場の中で救護対応が必要な方がすごく増えてきたときに「会場レイアウトをこう変えたらどうか」というような話し合いを密に行ってきました。その結果、大きなトラブルなく、レイアウトを変えながら、タイミング変えながら、予約の仕方を変えながらと、様々に試行錯誤しながら、ここまで7カ月、順調にこれたのではないかという実感です。

松原市長
 
ありがとうございました。平本副院長、今片山先生にお話いただきましたが、新ワクチン接種が順調に早く進んだことについて、慈恵第三病院から見ていかがだったででしょうか。

平本副院長
 市民の皆さんへの接種に関しては、医師会の先生方や市にお任せした形となりました。片山会長がおっしゃったように、狛江市へのワクチン供給は少し遅かったんですが、そこからのスピードがすごかったのと、まずはご高齢の方を集団接種で、その後個別クリニックの接種を加えていくやり方など、戦略が綺麗でしたよね。やはり接種率が高いというのは、後で振り返ってみても感染者を抑えることにすごく役立っていて、8月の第5波のときに慈恵第三病院に新型コロナの患者として来た方には、狛江市の方ってあまり多くなかったんですね。もちろん、住んでいる自治体によって受入れの判断をすることは全くありませんが、遠くの自治体から来る方が多く、狛江市の方が非常に少なかったのは、おそらく早くからしっかりとワクチンを接種できていたということが、一つの証ではないかと思います。

 ワクチンに関連して、慈恵第三病院としてお役に立てたこととすると副反応対応がありますが、副反応についても重篤の方はほとんどいらっしゃいませんでした。外来と救急で対応していましたが、アナフィラキシーショックと言われるような方はほとんどなく、もちろん、熱が長く続くとか、倦怠感が続くという方は、多少いらっしゃいましたが、大きな副反応が出た方はあまりいらっしゃいませんでした。
 若い方は、マスコミで言われているような副反応を気にされているようなところもありますが、副反応についてメインで診る病院としては、新型コロナワクチン接種は、決して副反応を恐れる必要はないと思います。

片山医師会長
 
我々医師会員は、集団接種会場でたくさん出務しましたが、一日に500人~700人と非常に多くの方を診る中で、常に副反応に対して懸念はしていたのですが、例えば、集団接種会場のメイン会場である上和泉地域センターの前には慈恵第三病院があって、何かあったら慈恵第三病院の方が受け入れてくれるという安心感があったからこそ、私たちもスピードを上げて接種できたというところもありました。本当に慈恵第三病院の先生方のバックアップのおかげであったと感謝しています。

 

3回目接種の効果は?

松原市長
 
すぐそこに病院が見えるので安心できますよね。
 それでは、次のテーマ「追加接種・3回目接種」に移ります。いよいよ3回目接種が始まります。基本的には1・2回目接種がベースになりますが、いくつか変わってくる点、気になる点もあります。この辺について、お二人の医療的な知見からご見解をいただきたいと思います。

 3回目接種は、2回目接種を完了した順に接種していきますので、医療従事者の方がまず接種していただき、その後にご高齢の方ということになります。そこで、まず3回目接種の効果というものが気になるところです。追加接種の効果について様々報道されていますが、まだ浸透してないところもあると思うんですね。オミクロン株の感染拡大などが懸念される中、3回目接種の効果は実際のところどうなのでしょうか。また、オミクロン株にも効果はあるのでしょうか。

片山医師会長
 3回目接種は、我々医療従事者としても接種しなければいけないと思っていますが、ただ漠然と接種しなければいけないと言っているのではありません。実は、私のクリニックでも3回目接種に当たり、スタッフにどのくらい抗体価が残っているのか事前に全員調べてみました。2回目接種から6カ月を超えた辺りの時期の検査でしたが、個人差があって、抗体価が高い人もいれば、当初の4分の1くらいまで減ってしまっている人、かなり減っている人もいました。個人によりばらつきがありますが、6カ月で抗体価がすでに下がってる人が結構いるという結果でした。

 それを考えると、市民の方々も2回目接種から7カ月、8カ月という時期になると、おそらく感染に対する防御力はかなり弱まってきているのではないかと思います。オミクロン株は、従来のアルファ、ベータ、デルタ株などと比べて非常に感染力が強いと言われています。1・2回目のワクチンの効果が弱まっている中で、仮にですが、オミクロン株が今後市中感染で流行してきたときに、それに対抗する武器がないことになってしまうので、我々医療従事者も市民の方々も、できる限り防御力を高めておき、いざ第6波、第7波に備えるため、3回目接種は間違いなく必要なことだと思います。

平本副院長
 3回目接種が始まったのは、一番早い医療機関でも12月からですので、まだ1カ月弱になります。そのため、3回目接種の効果を私たちが現在の段階で実感することはなかなか難しいのが現状です。ただ、世界ではもっと早く接種しているところがあって、イスラエルでは、3回目接種が感染予防という点からも、重症化の抑制、入院の回避、もちろん死亡率低下の点からも明らかに良いというデータが出てきています。3回目接種がどのくらい有効かというしっかりとしたデータはこれから徐々に出てきますが、逆に、他に何か良い手はあるかというと、特にないというのが現状です。

 そのため、先ほどの副反応の問題はそれほど大きくないということもある程度わかっていますので、3回目接種をできる限り早いうちに受けたほうが良いと思います。あくまでも病気というのは体の抵抗力、免疫との戦いになります。個人差は大きいですが、最も安全であるという点からもできる限り多くの方が、できる限り早いうちに接種しておくということが大切だと思います。

 

交互接種の効果・安全性・副反応について

松原市長
 
両先生のお話で、個人差はあるものの6か月を超えると1・2回目の抗体価が下がってくること、1・2回目と副反応に大きな差はないということ、また、オミクロン株に対抗するためにも、できる限り早く3回目接種を受けたほうが良いということがわかりました。

 ただ、国からは先にモデルナを供給するという情報が入っていますので、ファイザーの十分な供給は少し遅れることとなります。私は1・2回目でファイザーを接種したのですが、3回目をモデルナで接種するとなると、いわゆる交互接種になります。狛江市民の皆様は1・2回目でファイザーを接種された方が多いため、交互接種に対してご心配なさる方もいるのではないかと思います。この交互接種についてはいかがでしょうか。

片山医師会長
 
ワクチン接種で重要なのは有効性と安全性のバランスです。有効性に関しては、交互接種のほうが抗体価の形成は高いようです。海外のデータですが、1・2回目をファイザー、3回目もファイザーを接種する場合、抗体価は約20倍増えるとされていますが、1・2回目ファイザー、3回目モデルナになると約37倍に増えるというデータがあります。そう考えると、先ほどのオミクロン株のような、まだ未知の部分が多いウイルスを敵として相手にする場合、抗体価が人によっては下がってきている時期でもありますので、しっかりと抗体価を上げられるような有効性のある方法を選択すべきということです。

 もう一つは安全性です。モデルナは、接種部位の腫れ、発熱、血栓ができるなど言われています。外国では若年層について、モデルナはこうした反応が比較的強めに出るというデータもあるようですが、ご高齢の方々には、モデルナ接種の副反応はそれほど多くありません。ましてや3回目接種におけるモデルナワクチンの接種量は、1・2回目の半分になります。一定程度の有効性が担保されながらも、安全性に関しては1・2回目の量に比べて半量で済むということを考えると、時期の早さを優先する、有効性を優先する、安全性は一定程度担保されているという点から、デリバリーの順番でモデルナがまず供給されるのであれば、3回目の最初に接種していただくご高齢の方にモデルナで接種を始めるのは、理に適っていると思います。

松原市長
 
ありがとうございます。できる限り早くご高齢の方に接種いただき、重症化させないというところが大事だということですね。感染者を受け入れる側の病院としてはいかがですか。

平本副院長
 
やはり病気というのは、重症化するかどうかがとても大切なところです。重症化する大きな要素の一つとして、高齢ということが挙げられます。高齢であるということは様々な疾患があり、いかに適切に予防していくかということが大切ですので、ご高齢の方には、とにかくできる限り早く接種することが望まれます。片山会長がおっしゃったように、当初はモデルナのほうが副反応が強いのではないかという懸念もあったのですが、副反応にも色々なパターンがあります。
 細かい話になりますが、メッセンジャーRNAの量がファイザーは約30、モデルナは約100でしたが、今回モデルナは半分の量になるので約50になります。入ってくるメッセンジャーRNAの量が少なくなっても抗体の誘導はしっかりされますし、アレルギーに関しては別ですが、免疫反応による発熱やその他の副反応が少なくなる可能性は高いのではないかと思います。

 ご高齢の方はどうしても抗体の誘導、抗体価の高まりが弱いので、ある程度、そういった作用が強いモデルナを接種するというのは理に適ったことだと思います。モデルナも60歳を超えて接種すると、副反応がかなり小さくなるということもわかっていますので、特にご高齢の方は、3回目接種で半分量のモデルナを接種することが一番良い方法と思います。

松原市長
 
なるほど。よくわかりました。先生方の患者さんから、3回目接種のご相談について、まだあまり寄せられていないかも知れませんが、もしご高齢の方から、3回目接種をモデルナで接種して大丈夫かと尋ねられた場合、どのようにお答えになりますか。

片山医師会長
 
私は、外来の患者さんには、狛江市の接種について、ワクチンや接種券、接種などの予定をお話ししています。あわせて「3回目接種は現実にすぐ目の前まで来ているので、そのつもりでいただきたいこと」「ワクチンを選べる自治体もあるかも知れないが、狛江市は接種を安全かつ有効に、また、迅速に進めるため、一番我々が有効だと思うモデルナでのスタートを予定していること」「モデルナは風評に惑わされて恐がる必要はもちろんないが、どうしてもファイザーが良いという場合には、少し遅れて個別接種はファイザーでスタートになるかもしれないので、その時まで待つというのも一つの手であること」「一番重要なのは早く接種することであり、オミクロン株に備えるためにも早さがとにかく大事であること」などをお伝えしています。

 また、1・2回目接種では、皆さんすごく協力的に受けていただいたのですが、ご高齢の方は予約を取るという手続きが非常に大変でした。今回はその予約手続きをなるべく簡略化するなど、皆さんにご負担をかけないよう医師会と、市の方と相談して、迅速で簡単に接種できるような方法でモデルナを準備しているということをどんどん宣伝しています。

平本副院長
 
正にそのとおりで、いかに早く接種できるかどうかだと思います。なんとなくモデルナが恐くてファイザーが良いという気持ちもわからないではありませんが、そのために2カ月、3カ月と接種を遅らせずにモデルナを早く接種したほうが、予防効果としては圧倒的に大きいと思います。患者さんから直接質問されることはまだあまりありませんが、3回目接種をしたほうが良いかという話があったときには、できるだけ早く接種したほうが良いとお話ししています。

松原市長
 3回目接種はモデルナの接種量が半分になり、その分副反応が低減されるのではないかとのお話をいただきました。1・2回目接種ではモデルナアームなどについても報道されていましたので、もう少し副反応についてお聞かせいただけますか。

片山医師会長
 先ほど、1・2回目ファイザー、3回目モデルナの接種パターンでは、抗体価が約37倍になると言いましたが、これは1・2回目の量による結果です。そのため、半分量の場合、どこまで有効で、どこまで安全かというデータは今のところありませんが、基礎的なことを考えれば、先ほど平本先生がおっしゃったとおり、おそらく半分の量でも3回ともファイザーを接種するよりも有効性は高そうです。

 また、半分量になれば、モデルナアームなどもおそらく十分軽減されるであろうし、特にご高齢の方に関しては、風評として恐がる必要は全くないだろうと思っています。

松原市長
 
ありがとうございます。平本先生と同じご見解ですね。異なるワクチンの接種ということで、ファイザーから3回目接種はモデルナになっても特段問題なく、それよりもできる限り早く接種した方がいいということですね。

片山医師会長
 抗体価は確実に下がっていますので、早く接種することがとにかく大切です。

 

若者世代のモデルナ接種について

松原市長
 よくモデルナは、若い方には副反応が大きいと言われています。また、特に10・20代の男性は、心筋炎や心内膜炎の発症頻度が他の世代や女性に比べて多いという国の見解も出されています。やはり10・20代の男性はファイザーを接種したほうが良いのでしょうか。

片山医師会長
 先ほど平本先生がおっしゃったとおり、まず最初に供給されるのはモデルナであり、スピーディに順番どおり接種していくという中で考えれば、モデルナ接種に対してより安全なご高齢の方から接種していくことが最善と思います。そして、他と比べて副反応の出る可能性が高い方に対しては、徐々に供給が増えてくるファイザーを中心に接種していくということで良いと思います。狛江のやり方は、1・2回目接種のときと同じように、若年層・中間層を中心にファイザーを活用していくやり方が理に適っていると思います。

平本副院長
 10・20代の男性に関しては、心筋炎・心内膜炎が起こった数が、モデルナで100万人当たり60件程度、ファイザーでは15件程度となっています。これだけ見ると確かにファイザーのほうが少ないのですが、一方で新型コロナに感染して心筋炎や心内膜炎が起こる確率は約1%であり、ワクチンによる発生率と100倍以上も違うオーダーになりますし、しかもワクチンによる心筋炎・心内膜炎は、基本的には非常に軽症のケースが多いと言われています。
 我々は他のウイルス感染による心筋炎・心内膜炎で重症になるケースを見ているので、新型コロナでこうした副反応が出ることに最初は驚いたのですが、実際ワクチンによる心筋炎・心内膜炎はほとんどが軽く済んでおり、副反応としてすごく恐れる必要はないかと思います。

 

市民の皆様へメッセージ

松原市長
 
ありがとうございます。先生方から3回目接種について、市民の皆様が安心して接種いただけるような心強いご見解をお話しいただけたと思います。
 最後に、3回目接種に当たり、改めて先生方から市民の皆様に向けて一言メッセージをいただければと思います。

片山医師会長
 
我々が今守れるもの、コロナを敵にして守れるものは、基本的にはワクチン接種しかないと思います。もちろん、確かに感染してしまった方には経口薬が使えるようになったり、中和抗体を投与できるようになってきましたが、やはり感染したり重症化したくはありません。市民の皆さんの中から感染者、重症者を出さないために、今この時点でできることは何かと言われれば、しっかりと1・2回目のようにワクチンを確実に接種するということです。それも抗体価に応じてスピーディに接種することが大事ですので、3回目接種に向けて、できる限り早く、できる限り広く、そして我々医療従事者が準備することでもありますが、できる限り安全に進めていきたいと思っています。

 新型コロナとの戦いは、まだ道半ばであり、これからも続くことになりますので、ワクチンは我々にとってすごく大事な武器になります。さらに、狛江市医師会としては、平本先生もおっしゃっていた第3波から第5波にかけて医療従事者として多くの経験が積まれ、その結果、色々とできることがわかり、守る方法も多くなりました。

 狛江市医師会も第5波のときに、検査体制をしっかり充実させて、発熱外来を行っていただく先生も多くいらっしゃり、ホテルへの出務や、酸素医療提供ステーションなど、様々なところへ人員を多く出しています。
 また、自宅療養者も守らなければなりません。市も支援をしてくださっており、我々も往診やオンラインシステムを充実させて、ワクチン接種と医療支援体制の充実を狛江市医師会総動員でやっていこうと、今一度改めて、3回目接種の時期を合わせて検討しているところです。しっかりと我々が市民の方々を守るというつもりで、協働体制で臨んでいきますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

平本副院長
 3回目接種は感染の予防効果、重症化の予防効果、死亡率を低減させる効果があることは間違いない事実です。実際にどのようにして感染から守るかということについては、もちろんマスクや手洗いといった基本的なことが大切なのは言うまでもありませんが、ワクチン接種は、それと同等、もしくはそれ以上に重要なことだと思います。

 ただ、接種に当たっては、どうしても副反応が心配になると思うんですが、実際に我々が見ている中では、ワクチン接種の副反応よりも、コロナにかかった後の症状のほうが断然辛いんですね。そこから考えると、予防接種の副反応を恐れるよりは、コロナにかかった後の副反応を恐れたほうが合理的であると思います。

 我々医療従事者の中には、すでに3回目の接種を済ませている人がいます。私も3回目を接種しましたが、最初は2回目接種と比べて副反応が強いのではないかという心配もありました。公式の見解としては、2回目接種とほぼ同等となっていますが、その他のデータを見ると、実際には2回目よりも少し軽いのではないかという感覚が強いので、2回目の副反応で辛い経験をされた方は、二の足を踏むかも知れませんが、必ずしもそうではないということもありますので、ぜひ、積極的に接種していいただければと思います。

松原市長
 
ありがとうございます。市民の皆様の健康を守るということで、狛江市医師会、慈恵第三病院、そして市と三者で引き続き協力しながら進めていきたいと思います。
 2回目接種をされた方には、所定の期間が経過した段階でできる限り早く接種いただき、ご自身の健康を守り、そして安心していただきたいと思います。そのためには先生方のご協力なしには達成し得ませんので、どうぞ引き続きよろしくお願い申し上げます。
 本日はお忙しい中、貴重なお話をいただきありがとうございました。