プロフィール

中村 匠吾さん
富士通株式会社陸上競技部所属。専門は長距離走・マラソン。
三重県出身。駒澤大学在学中には、大学三大駅伝にも出走し、各大会で区間賞を受賞するなど、チームの勝利に貢献。
卒業後はマラソンに挑戦し、令和元年9月のマラソングランドチャンピオンシップで優勝し、東京オリンピック男子マラソン日本代表に内定。

狛江の多摩川での練習~自分を強くしてくれたコース~

市長 あけましておめでとうございます。本日は東京オリンピックの陸上競技・男子マラソン日本代表に内定されている中村匠吾さんにお越しいただきました。このたびは、男子マラソン内定の第一番目ということで、おめでとうございます。やはり狙っていらっしゃったんですよね。
中村 そうですね。ずっとオリンピックを目標にやってきました。
市長 出身校の駒澤大学で練習をされていると伺いました。グラウンドが世田谷区にあると思いますが、そこから多摩川の土手に出られて、狛江の方面に来ていただいているんですよね。多摩川の土手の走り心地はいかがでしょうか。
中村 学生時代からずっと走っています。土手は朝練習と長い距離を走る練習の時に使わせてもらっています。朝早くから結構いろんな方が走られていたり、散歩されていたりして、よく声を掛けていただいたりすることもあり、嬉しいです。
市長 橋が架かっている辺りから上流に少し進むとカーブしていて、松林があるなど、雰囲気がいいですよね。
中村 走る時には、体だけでなく心の面も大切で、リラックスして走れることもすごく大事です。走る時の周りの環境で自然があるのはすごく大きいので、とても走りやすいです。
市長 狛江の中で気に入っている場所はどこですか。
中村 多摩川の土手は学生時代からずっと何回も走っていて、思い入れがあります。今でも走らせていただいているので、そういうコースで強くしてもらったという思いがあります。
市長 ありがとうございます。
中村 市民ランナーの方もすごく増えてきているので、週末に走っていると特に人が多くいますね。
市長 もう有名になったから、なかなか走れないんじゃないですか。
中村 代表に内定してからは今までよりも練習中に声を掛けていただく機会がすごく増えました。

大学での陸上生活~恩師・仲間との出会い~

市長 私も中村選手と同じ駒澤大学出身ですので、先輩後輩になります。先輩といっても私はだいぶ前になりますが。今では駒澤大学の陸上部は駅伝で連覇もしていますね。大学3大駅伝である出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝の全部を連覇したことはありますか。
中村 全部はまだないです。在学中も、出雲駅伝と全日本大学駅伝では連覇できたのですが、箱根駅伝だけ勝てなかったです。
市長 この時期といえば箱根駅伝ですが、大学3大駅伝だとどれが一番難しいですか。
中村 やはり箱根駅伝ですかね。10区間あり、各距離も20㎞と長いので、それだけ選手をそろえるということが難しいです。学生で20㎞というのはかなりの距離で大変です。そこまでの練習や、当日の体調ももちろんですが、コンディションを整えるというのが難しいです。
市長 当日にエントリーを変更することもありますよね。それは当日体調が良くないとかそういうことなのでしょうか。
中村 本当に体調不良ということもありますし、作戦で使いたい選手を隠しておくためということもあります。数日前には本当のエントリーを伝えられているので、走る選手は分かっていますが、他校からは分からないようにする作戦です。
市長 そういうこともあるんですね。そうすると、そこは大八木監督の采配ということですね。
中村 そうですね。
市長 駒澤大学の陸上部に入られた時には、最初から大八木監督だったんですよね。今回の日本代表内定では大八木監督も喜ばれたでしょうね。
中村 大学生時代からずっと見ていただいている監督なので、とても喜んでくれました。
市長 大八木監督はどのような監督でしたか。
中村 レースの前半からしっかりと勝負に関わっていけるような、積極的なオーダーを組む監督でした。結果としては箱根駅伝では勝てませんでしたが、スピード勝負の出雲駅伝だったり、全日本駅伝ではしっかりと主導権を握ることができました。特に全日本駅伝は在学中に4連覇できたので、とてもいい経験をさせてもらえたと思っています。
市長 なるほど。中村選手は第1区を走ることが多かったですよね。第1区を走るのは緊張するんじゃないですか。
中村 そうですね。第1区はスタートなので重要で、ここで遅れてしまうと後の区間で遅れを生じさせてしまいます。チームの流れを作るという意味では非常に大事な役割だと思います。
市長 それだけ重要な区間なのですね。中村選手はそういった中でも区間賞もとられていますよね。
中村 3年生と4年生の時に区間賞をとることができました。
市長 スタートがいいと、つながっていきますよね。ところで、大学生活はいかがでしたか。
中村 大学4年間は楽しかったです。ずっと寮で一緒に生活をした同級生はもちろん、授業では陸上部以外の方とも交流できて、すごく楽しかったです。
市長 駒澤大学のグラウンドの近くにある寮ですよね。
中村 そうです。授業があるときは本校まで自転車で通っていました。
市長 狛江市内で農家をしている方にも駒澤大学出身の方がいて、今度そこに野菜を持っていこうと言っていましたよ。
中村 寮にはいろんな方が差し入れをしてくださいます。
市長 多くの方の応援・支援があるんですね。
中村 たくさんの方に応援してもらっているんだなと日々感じています。特に代表に内定してからは、さまざまな場所でも「頑張ってね」などと、声を掛けてもらっています。
市長 寮生活で思い出に残っていることはありますか。
中村 練習はきついこともありましたが、同級生と一緒に乗り越えてきましたし、練習が終わった後に、部屋で普通の会話をしたり、日曜日は部としての練習はなくフリーの練習だったので、土曜日の練習の後に一緒に出かけたりなどしました。
市長 同級生には村山謙太選手がいらっしゃいますね。
中村 はい。今は旭化成に所属しています。
市長 やはり在学中からライバルだったんですか。
中村 彼とはすごく不思議な関係で、とても仲が良くて、でもライバルでもあって、今でもよく連絡を取り合っています。4年間ずっと一緒にいた印象です。寮の食事が無いときは一緒にごはんを食べに行っていました。でも練習や試合になったら一番負けたくない相手でした。
市長 村山選手もそうでしょうね。本当に良い仲間ですね。

陸上を始めたきっかけ~子どもたちへ伝えたいこと~

市長 最初にマラソン、陸上競技を始めたきっかけは何ですか。
中村 陸上競技を始めたのは小学校5年生です。地元に陸上のクラブチームがあって、そこで始めました。始めたきっかけは、毎年冬にあった小学校のマラソン大会で、特に練習もしてなかったのに割と上位の方になれたことです。また、走ることがもともと好きでした。最初はクラブチームに友だちが入っていたということもあったり、マラソン大会で結構上位だったので始めてみようかなというのが最初のきっかけでした。そのうち、同じ三重県出身の野口みずき選手がアテネオリンピックで金メダルをとったり、マラソンの注目度が高まってきたこともあって、憧れを持って、いずれマラソンをやってみたいなという気持ちに変わっていきました。
市長 憧れの選手がいたり、世界的に通用するアスリートがいたりするのを見て、いいなと感じたということですね。
中村 そうですね。マラソン練習はトラックの5,000mなどとは練習内容が変わってきて、マラソンをやりたかったのになかなかできない時期というのもありました。練習量が増えるのに対応した体づくりだったり、体調面というのもあって、社会人になって、平成30(2018)年3月に初マラソンをやったんですけど、それまでは試行錯誤しながら取り組んできました。
市長 子どもの頃に憧れの選手がいたり、自分は走るのが速いぞという思いがあって、どんどんスキルをあげてきたんだと思います。陸上競技だけに関わらず、これから何かに挑戦しようとしている子どもたちに何か助言をもらえますか。
中村 今、少しずつマラソン界が盛り上がってきていて、注目度も高まっているような気がします。私自身が小学校5年生で陸上を始めて、その頃から単純に走るのが楽しいという気持ちや好きだという気持ちで始めて、ここまでずっとやってくることができました。継続することの大切さを感じていますし、何かを好きだという気持ちで続けていて、最終的にその夢の目標まで向かってやっていくことが大事なのかなと思います。
市長 そういう考えを持つと世界に通用するアスリートになれるんですね。狛江でもマラソンをやっている子がいます。以前は狛江青年会議所主催の狛江1周わんぱく駅伝という小学生が走る駅伝がありました。駅伝で狛江を1周するんです。
中村 小学校の時は特に駅伝大会がすごく楽しみで、今でも思い出になっています。そういうところからどんどんレベルアップしてもらいたいなと思います。
市長 中村選手は、憧れの対象や目標にされる側になっていると思います。子どもたちが自分もオリンピックに出るんだという目標になりますよね。
中村 目標にしていただけるような結果を残していかなければいけないと思っています。

今年の大きな挑戦に向けて~夢の舞台で良い結果を~

市長 今年の7月からいよいよオリンピックが始まりますが、レースに臨む気持ちや意気込みはいかがでしょうか。
中村 そうですね。オリンピックが近づくにつれて、注目度が上がってくると思うんですけど、周りに惑わされることなく、今まで通り、まずはスタート地点に100%の状態で立つことを考えています。それが一番大切なことなので、まずは自分自身の練習に今まで通り集中し、しっかりと計画を立てて、本番に万全な状態で立てるようにすることが今の目標です。そして最終的に良い結果を残せるようにしたいと思っています。
市長 今から当日のイメージトレーニングとかをやっていくんですか。
中村 本番は8月9日なので、マラソン練習に入るのは4~5月辺りからになると思うんですけど、冬場の練習の積み重ねが非常に大切になってきます。まずは故障や体調管理に気を付けつつ、本番もこの間のマラソングランドチャンピオンシップ(以下MGC)以上に、レース中の揺さぶりだったりとか、精神面のコントロールというのが大切になってくると思うので、そういったところを少しずつ準備していきたいと思っています。
市長 MGCでは、後半の上りの所で仕掛けましたよね。やはりあれが作戦なんですか。
中村 そうですね。前日などに試走してコースを見ていたんですけど、思い描いていた通りのレースができました。
市長 それは素晴らしいですね。それは自信があったということですよね。
中村 それまでに比較的余裕を持ちながら走れていたので、大体40㎞辺りから勝負できたらいいなと思っていて、実際にその辺りから仕掛けて、決めることができました。普段のマラソンはペースメーカーが30㎞までいるので、そこまでペースが動くということはないんですけど、MGCは最初からペースメーカーがいない勝負のレースでした。最初から誰がどこで仕掛けるか全く分からないレースで、細かなゆさぶりがレース中ずっとあったんですけど、そういった中で比較的冷静に対処して、最後の勝負のポイントまで見極められたのかなと思います。
市長 ずっとマラソンばかりになってしまうかと思いますが、少しは気分転換が必要じゃないですか。
中村 そうですね。9月のレースが終わった後は4週間ぐらいオフをとったんですけど、そういうときはリフレッシュするようにしています。私の場合は4週間ぐらい全く走らないで、しっかり気持ちの面もリフレッシュして、体のメンテナンスもしました。そういうメリハリをつけることも大事なのかなと思っています。
市長 食生活も気にしなくちゃいけないですね。
中村 そうですね。マラソンは生身の体1つで走る競技なので、例えば胃の疲れがあるだけでも結果が大きく変わってしまいます。日ごろからその練習量に対しての食事を摂るということがすごく大切です。
市長 マラソンは42.195㎞走りますが、「行けそうだな」と思うのはどの辺りですか。
中村 マラソンは2時間ぐらいの中で急激に体調が変化します。私はだいたいスタート地点に立った時点で8割ぐらいは決まっていると思っています。その残りの2割が走っている間にどう変化してくるのかという部分です。35㎞以降ぐらいになるとだいたい勝負が見えてくると思います。
市長 そこではもう完全に頭の中にイメージがあるということなんですね。でも選手同士でいろんな仕掛け合いがあるから結構大変なんですね。
中村 その時々の判断だったり、自分自身のコントロールというのがすごく大事になってくる競技です。
市長 走っている時は、沿道からの声援や監督・チームメイトの声は聞こえるんですか。
中村 家族や知り合いの声は聞こえやすいです。
市長 声援が励みになりますよね。駅伝の時は監督車が後ろにいますけど、マラソンのペースは自分で考えて作らなくてはいけないんですか。
中村 スタート地点に立つまでにある程度の作戦・指示を受けていますが、そこから2時間は自分でしっかり考えながら走らなくてはいけないので、そこもまた難しいところの一つです。
市長 オリンピックの出場が早い段階で決まりましたが、気持ち的にはいかがですか。
中村 代表に決まった時点であと1年あったので、比較的長い時間を準備に当てることができます。MGCも約1年半前に出場権を得ていたので、余裕があったというのが優位に働きました。今回も準備期間に当てることができるので、プラスになるのかなと思います。
市長 練習もそうですが、精神的な面でも少しは余裕があるということですね。
中村 そうですね。
市長 今年の夏も暑そうですが、中村選手は暑さはさほど苦手ではなく、強い方ですか。
中村 どちらかというと暑さは自分にとってプラスに働いてくれるのかなとは思っています。どちらかというと寒いよりは暑い方が体が動かせます。
市長 先ほどMGCのメダルをお持ちでしたね。ちょっと見せていただいてもいいですか。
(実際にメダルを持たせていただく)
市長 いやーこれはすごいな。さすが金メダルですね。すごく重いです。今年の夏もこの色のメダルを狙うんですよね。
中村 はい。やはり一番良い色のメダルが獲りたいです。
市長 ぜひ頑張ってください。

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