平成30年8月27日(月曜日)開催の狛江市議会第3回定例会において、松原市長は4年間の市政運営に向けて所信を表明しました。
 以下はその全文です。

 7月22日に執行されました狛江市長選挙において、市長に就任し初めての狛江市議会定例会に当たり、1期4年間の市政運営に向けて所信を申し上げます。

人にやさしいまちづくり

 私も副市長時代に策定に関わった現在の第3次基本構想には、まちづくりの原則として、「平和を求め人権を尊重するまちづくり」を掲げ、そこには「平和な社会を実現するため、市民一人ひとりが地域社会の担い手であることを自覚し、差別や偏見のない人権を尊重するまちづくりを進めます。」とあります。そのためには、人が人を思いやるやさしさが必要であるとの考えから、「人にやさしいまちづくり」を私の政治姿勢の基本に据えて取り組んでまいります。
 ハラスメントは人権侵害です。残念ながら前市長によるハラスメントで市役所内部は混乱していたと思います。市長就任後この間、多くの職員と接しましたが、以前と変わらぬ表情で業務に向き合う姿を見ると内部の混乱は収まってきていると感じております。内部のハラスメント対策といたしましては、平成30年狛江市議会第2回定例会で議員提案により「狛江市職員のハラスメントの防止等に関する条例」を制定いただきました。本定例会に補正予算を提出させていただいておりますが、条例は11月1日から施行することとし、外部有識者を含む苦情処理委員会を設置するとともに、外部相談機関を設けてまいります。また、ハラスメントの防止には意識教育が欠かせません。しっかりとハラスメント研修にも取り組み、市役所の内部から「やさしさ」を作り上げてまいります。そして、市民からの信頼回復に向けましては、仮称ではございますが、人権尊重基本条例の制定に取り組んでまいります。これは、狛江市のあるべき姿として、人権の尊重を市民としっかりと共有していくための第一歩となるものと考えております。

地方財政の状況と狛江市の行財政運営

 平成30年6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」では、「中長期的な視野に立つと、人口減少・少子高齢化は、経済再生と財政健全化の両面での制約要因となり続ける。2024年には歴史上初めて50歳以上の人口が5割を超えることになる。その後も、若年人口や生産年齢人口が急速に減少していく一方、高齢者人口は2040年頃のピークに向け増加を続け、75歳以上の後期高齢者の総人口に対する比率は2030年頃には2割に近づく。」とされています。そして「今後の財政健全化の道筋を展望すれば、全世代型社会保障の構築に向け、少子化対策や社会保障に対する安定財源を確保するとともに、現役世代の不安等に対応し、個人消費の拡大を通じて経済活性化につなげるためには、2019年10月1日に予定されている消費税率の8%から10%への引上げを実現する必要がある。」とし、重点的な取組として「人づくり革命」を掲げ、幼児教育の無償化、待機児問題の解消、高等教育の無償化に取り組むとされています。財政健全化目標としては、2025年度の国・地方を合わせたプライマリー・バランス黒字化を目指すとし、地方の歳出水準については、「交付団体をはじめ地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源の総額について、2018年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保する。」とされました。
 狛江市においては、平成30年8月1日現在、人口は82,402人と増加傾向にありますが、狛江市人口ビジョンでお示ししていますとおり、長期的には人口減少、更なる超高齢社会への進展が見込まれます。
 狛江市の財政状況を見ますと、平成24年11月に策定された「狛江市中期財政計画」財政規律ガイドラインに基づき、財政規律に努めた結果、平成29年度決算におきましては、一般会計の地方債残高は約196億8千万円となり、前年度比約2億4千万円減少しています。また、基金残高につきましても約39億6千万円で、前年度比6億5千万円増額することができました。経常収支比率は91.2%となり、前年度比1.1ポイントの悪化となりました。悪化の主な要因といたしましては、待機児解消に向け、保育定員の拡大を進めた結果、経常経費となる保育所等児童運営費が大きく増額したことによるものです。しかしながら、人口減少への対応として、国が掲げた幼児教育の無償化、待機児問題の解消には、しっかりと取り組んでいかなければならないと考えております。団塊の世代が75歳以上となる2025年には、これまで以上に社会保障関係経費が増大してまいります。また、2030年以降には小中学校の建替えも視野に入れておかなければなりません。持続可能な自治体として、中長期的な視点を持った財政運営に努めてまいります。
 行政運営の基本は市民参加と協働です。市民参加と協働を推進するためには、市民に信頼される情報公開・情報発信が必要です。「狛江市の市民参加と市民協働の推進に関する基本条例」が制定されてから、既に15年が経過しております。今一度、原点に立ち返り、まずは市民参加と協働について、職員の理解を深めてまいります。行政運営には職員の力は欠かせません。人財の育成が大切です。既に庁議で指示いたしましたが未来戦略会議による人財育成に取り組んでまいります。これは主に係長職を対象に、どのようなまちづくりを進めたいのかを考え政策提案してもらうことを想定しています。併せて職員のコンプライアンス機能の強化にも努めてまいります。
地方公共団体においては、人口減少・高齢化の進行、行政需要の多様化など社会経済情勢の変化に一層適切に対応することが求められております。ふるさと納税の影響により平成29年度は約1億円の減収となりましたが、厳しい財政状況の中でも安全かつ良質な公共サービスを確実、効率的に提供することにより地域課題の解決に取り組まなければなりません。引き続き質の高い公共サービスを提供するためには、ICTの徹底的な活用や、民間委託等の推進などによる更なる業務改革の推進も必要となってまいります。狛江市の実情を踏まえ、行財政改革を推進してまいります。

防災・安心安全

 西日本で発生した平成30年7月豪雨災害では、200人以上の方がお亡くなりになりました。この場をお借りいたしましてお悔やみ申し上げます。また、未だ行方不明の方もいらっしゃいます。8月21日時点では避難所に2,100人以上の方が避難されております。被害に遭われた皆様にお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復旧復興を祈願しております。
 多摩川と野川がある狛江市においても、同様の水害が起こる可能性はゼロではありません。狛江市洪水ハザードマップの多摩川はん濫版では、2階の床下までつかる3メートル以上浸水する地域が市域の半分程を占めています。平成30年7月豪雨災害を教訓に、そして狛江市に置き換えた状況を分析し、どのような対応が必要となるのか検討してまいります。災害が発生した場合には、避難指示や避難所の開設など、様々な対応が必要となることからも、危機管理体制の充実が求められます。昭和49年の多摩川堤防決壊、そして平成16年に発生した新潟県中越地震における、ふるさと友好都市川口町への支援活動の経験を活かし、危機管理体制の充実に努めてまいります。
 地震への備えも重要な課題です。旧耐震基準で建築された住宅への各戸訪問を行っていますが、大阪府北部地震を受けて、ブロック塀の危険性についても併せてお知らせしております。地震発生時の被害を最小限にできるよう取り組んでまいります。
 町会・自治会等による地域への防犯カメラ設置台数を増やすため、今回の補正予算で増額をお願いしておりますが、防犯カメラは犯罪抑制に効果があります。また防犯協会の協力による安心安全パトロールや、地域住民による学校安全ボランティアなど、多くの市民にご協力いただいて犯罪の未然防止に努めております。この市民との関係を更に広げてまいります。特殊詐欺対策としては、自動通話録音機の貸与を行っておりますが、平成30年1月から6月の半年間で、特殊詐欺被害は17件で被害金額は約2,200万円となっています。効果的な周知・啓発に努め、犯罪のないまちを目指してまいります。
 狛江市内の交通事故件数・死傷者数については概ね減少傾向にありますが、東京都と比較した場合、年齢別で見ますと、若年層と高齢者の構成割合が高くなっています。また、状況別では自転車と歩行者の死傷者の構成割合が高くなっています。高齢化社会の進行を考えますと、人優先の交通社会の形成が必要となります。併せて高齢者や障がいのある方など交通弱者に対する外出支援も重要な課題です。公共交通ネットワークの充実を図り、防災、防犯、交通安全対策など、市民の生命、身体及び財産を守るための体制の整備に努め、全ての市民が安全で安心して暮らせる機能的なまちづくりを推進してまいります。

医療福祉・子育て・介護

 地方自治体の基本は住民の福祉の増進を図ることです。地域コミュニティを取り巻く環境が大きく変化する中で、新たな地域生活課題を抱えている人や世帯が増えることが予想されます。そのため、福祉の「支え手側」と「受け手側」に分かれるのではなく、地域のあらゆる市民・団体・事業者が役割を持ち、支え合いながら、自分らしく活躍できる地域コミュニティを育成し、公的な福祉サービスと連携・協働して助け合いながら、ともに暮らす地域共生社会の実現に向けて取り組んでまいります。
医療と介護の連携は、重要な課題です。平成30年8月1日現在、65歳以上の市民は19,709人いらっしゃいます。そのうち75歳以上の市民は10,595人で人口の12.9%を占めています。団塊の世代が75歳以上となる2025年以降は、国民の医療や介護の需要が、更に増加することが見込まれていることから、厚生労働省においては、2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。市域が狭い狛江市において、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される、コンパクトさを活かした狛江らしい地域包括ケアシステムの構築に向けて取り組んでまいります。また、超高齢社会を地域で支える仕組みの1つとして介護ボランティア制度の導入を目指してまいります。
高齢者がいつまでも健康に暮らせるために、健康寿命を延伸させる取組は重要です。病気の早期発見、早期治療により病状を悪化させないためにも、検診の充実や健康づくりに力を注いでまいります。健康でいるためにはお口の健康も大切です。いつまでも食べる楽しみを感じられるよう口腔ケアの取組も推進してまいります。医師会、歯科医師会、薬剤師会等とも連携し、地域医療の充実にも努めてまいります。
 障がいのある方の重度化や高齢化、また親亡き後を見据え、地域が抱える課題に向き合い、地域で障がいのある方やその家族が、安心して生活するためには地域生活支援拠点の整備が必要です。狛江市では和泉多摩川駅前のぽかぽか広場に、地域生活支援拠点を整備する方針でありましたが、この土地をめぐり、現在、係争中であり、既に3年が経過しています。市の方針を再度整理し、障がいのある方も安心していつまでも生活できるよう、地域生活支援拠点の整備を促進してまいります。
 今年度、実施設計を行っている子育て・教育支援複合施設については、福祉・子育て・教育部門が一体となって、相互に連携しながら総合的な支援を実施できるよう進めてまいります。
 そして少子化対策も重要な課題です。15歳未満の年少人口は、全国的には減少傾向ですが、狛江市においては人口の増加に伴い5年前と比較して923人増加し、平成30年8月1日現在、9,651人となっています。子どもは元気をくれます。まちの活性化には欠かせない存在です。狛江市で子どもを生み育てたいと思ってもらえるまちづくりが必要です。今年度も2園の保育所整備や、学童クラブの整備を目指すなど、既に待機児対策に取り組んでいるところでありますが、引き続き待機児解消に向けた取組を推進してまいります。併せてテレワークやサテライトオフィスなど、誰もが働きやすい環境の整備にも努めることで、少子化対策、人口減少対策を図ってまいります。
 近年、貧困の連鎖という言葉を耳にします。国は子どもの貧困対策の推進に関する法律を平成26年に施行しました。そして第1条の目的には「子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、及び子どもの貧困対策の基本となる事項を定めることにより、子どもの貧困対策を総合的に推進することを目的とする。」とされています。今年度、狛江市におきましても、子どもの生活実態調査を実施しますが、その結果をしっかりと分析し、子どもの貧困対策を充実させてまいります。
 学校教育では、全ての子ども達の学びを保障する特別支援教育の充実をはじめ、抜本的な不登校対策や、ICT教育など多様な学びの場の整備に努めてまいります。また、教職員が児童・生徒と向き合い、質の高い学びを追求する働き方改革を推進してまいります。

環境・文化・経済

 狛江市の人口は増加していますが、その反面、生産緑地は減少を続け、約30.29ヘクタールとなっています。本定例会に「狛江市生産緑地地区に定めることができる区域の規模に関する条例」を提案させていただいておりますが、これはこれまで500平方メートル以上必要であった面積要件を300平方メートル以上に引き下げることで、生産緑地を増やし、都市農地を保全するための取組です。都市農地は、新鮮・安全な農産物の供給だけではなく、防災機能、交流・レクリエーション、体験の場の提供、ヒートアイランド現象の緩和など、多面的役割を果たしています。狛江ブランド農産物の普及支援など都市農業の支援に努めてまいります。
 この夏の猛暑も地球温暖化の影響が少なからずあるものと思われます。豊かな自然環境や健康で安全な生活環境を未来へ引き継ぐために、今から地球温暖化対策など環境問題の解決に向けた対策に取り組まなければなりません。来年度にかけて改定を行う狛江市環境基本計画の中で具体的な施策を検討していくとともに、環境保全についてより多くの市民の関心や理解を深め、市民一人ひとりの取組を促進してまいります。市民に身近な廃棄物行政につきましては、更なるごみの分別の促進とごみの総量削減のため、市民が取り組みやすい行動についての普及啓発に努めてまいります。
 文化活動は人々を豊かにします。狛江市では音楽の街-狛江事業や絵手紙事業に取り組んでいますが、ともに市民による活動です。このような文化活動を行政として支援し、市民の協力のもと、更に展開させてまいります。市民センターは狛江市にとっては文化の拠点です。現在、市民センターを考える市民の会と協議を継続しておりますが、老朽化対応も喫緊の課題です。公民館、図書館、そして市民活動支援センターを含めた生涯学習と市民協働の観点から、市民センターのあり方を検討してまいります。
 2019年にはラグビーワールドカップ2019、そして2020年には東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されます。時期は未定ですが、狛江市内でも聖火リレーが行われる予定です。両大会の成功に向けて、気運の醸成に努め、関係団体が実施するプログラムへ参画するなど、多くの市民が参画し感動を共有する機会の創出に努めてまいります。市民のスポーツへの関心を高め、健康づくりへの意識向上など、スポーツ活動への支援や環境整備を推進してまいります。
 まちの活性化には商工業の発展も欠かせません。残念ながら平成29年度決算では、法人市民税は約2億9,200万円で市たばこ税よりも少ない額となっております。市内の産業活動が活性化することで地域に活力をもたらし、市民生活の向上につながるといった循環作用が働きます。このことを市と事業者がお互いに共通認識として持ち、商工業の発展に向けて取り組むことが必要です。市としても、これまでの商店街への支援に加え、元気に頑張る個店や、特色ある事業者を支援する仕組みを構築してまいります。

魅力向上

 2020年には市制施行50周年という大きな節目を迎えますが、これを契機に改めて市の魅力を再認識しなければなりません。狛江市の魅力の1つは、やはり多摩川です。観光協会の協力による撮影支援に取り組んでおり、多摩川の河川敷での撮影が数多くあります。映像による情報発信力を強化し、狛江市の魅力を市内外へ発信してまいります。昔は多摩川のボートに乗るために人が並んでいたことを思い出します。水辺の楽校の活動支援に加え、更に多摩川が魅力ある場所となるよう、市民の協力を得て多摩川の魅力を高めてまいります。
 市制施行20周年の記念事業として始まった「狛江古代カップ多摩川いかだレース」は市民の実行委員会によるイベントで多摩川の魅力を発信しています。「メビウス∞えきまえ広場」も整備されました。市民主体による市の魅力を高めるイベントの支援にも努めてまいります。併せて市民自らのアイデアを市民が応援する仕組みを検討してまいります。
 現代社会は親と子だけの核家族化が進行し、また子どもの人数も少なくなっています。様々な世代との交流は、子どもたちの成長だけではなく、年長者にとっては新たな気づきが得られる場ともなります。狛江市においても200軒以上の空家が存在します。空家等を活用した多世代交流の居場所の整備を推進してまいります。

今後に向けて

 市長に就任し、1か月が経ちましたが、この間、各部とのヒアリングなど、現状の把握に努めてまいりました。防災センターや中学校給食センターの建設、新設保育所の整備など、まちづくりが進められてきております。特に防災・防犯面、待機児対策は推進されていると感じております。その反面、市民参加・市民協働はあまり進んでいない印象がございます。市役所から6年間離れておりましたが、自ら起業し民間の経営感覚も養ってまいりました。これからは市政のために、その経営感覚も活かし、そして38年間の行政経験も活かして、まちづくりを推進してまいります。
 まずは市民からの信頼回復が第一ですが、その上で、人にやさしいまちづくりを基本として、市民が狛江市に住んで良かった、これからも住み続けたい、また、狛江市に住んでみたいと思われるよう、魅力あるまちづくりを推進してまいります。