映画「バルトの楽園」で、松平健さん演じる松江豊寿氏は、狛江ゆかりの人であることをご存じでしょうか。
 松江氏は、福島県若松市(現会津若松市)出身の軍人で、大正6年、現徳島県鳴門市にあった板東俘虜収容所の所長に就任しました。折からの第一次世界大戦で収容されたドイツ人捕虜に対し、「彼らは愛国者であって犯罪者でない」として、人道的に取り扱いました。陸軍省から「対応が甘い」と批判されましたが、松江氏は、捕虜の中の優れた技術を持つ職人に着目し、施設の修理や生活用具をドイツ風に改善することを奨励し、肉屋や製パン所、印刷所の開設等を認めました。しかもこうした事業を所外にも広げ、酪農や石橋造りなど地域の発展につなげています。松江氏は退役後、故郷若松で市長を務めた後、昭和10年ごろから狛江村小足立に住み、昭和31年5月に病没しました。この間、狛江来往の経緯や生活の様子はほとんど伝わっておらず、静かな余生を送られたようです。
 ちなみに、第二次大戦後、岩戸でソーセージ等の製造を始めたヘルマン・ウォルシュケさんも、この時期のドイツ人捕虜の一人でした。こう見ると、我がまち狛江に、歴史と関わる人物はもっといるのかも知れません。この掘り起こしが、誇りや愛着を持てるまちづくりにつながるとしたら、真剣に検討する価値があるように思います。

狛江市長 矢野ゆたか