生まれた子が初めて膳に着く「お食い初(ぞ)め」の祝いは、生後百日目か百十日目、または百二十日目に行われてきました。今に続くこの習わしを、明治生まれの人などの話から紹介します。
 「生まれて百日目だったかに、お食い初めってね、まあ、ちょっとしたお祝いですよね。首がしっかりすわるころにやるんですね。生後三日目のミツメのぼたもち、七日目のお七夜、それから三十日過ぎてのお宮参り。そのあとが、ごく内々で祝うお食い初め。成長の節目々々のお祝いってわけですよね。」
 「百日目のお祝いを百十日目にやることも多いんですけどね。それは、食い延ばすようにって、長生きするようにってね、意味があるんだって聞きましたよ。百二十日目にやったということも聞いてます。」
 「子ども用の小さい食器一式、ご飯茶わん・汁わん・皿・箸などをお膳に並べ、小豆ご飯に尾頭付きでね。お煮しめもちょっとね。小豆ご飯を一粒でも二粒でも口に入れてやって、食べるまねごとをするわけです。お赤飯という家もありますけど、小豆ご飯が多かったんじゃないんですか。神棚や仏壇にも供えてね、お食い初めだと報告するんです。神様やご先祖様にね。」
 この日のための食器一式は、初めての子のときには、嫁の里から届けられたという人もいますが、近くの荒物屋などで買ってきたり、あるもので間にあわせたりと話す人もあります。
 お食い初めに使う尾頭付きの焼き魚は、鯛を用意した家もありますが、多くは鰯などでした。魚は頭の固いものがよいのだといいます。この膳には小石をそえる習わしもみられました。丈夫な歯が生えるように、石のように固い丈夫な歯になるようにと、歯固めの願いが込められています。この小石を「石のおかず」とよぶこともあったそうです。石は多摩川の川原で拾ってきたり、家の井戸端近くや主屋の雨だれ落ちのところから拾ったりしました。また、お宮参りをした氏神様の境内から拾ったりもします。
 小石をお食い初めの膳に置くことを、いまではあまり聞けなくなりましたが、近年もこの習わしの行われていた家もあります。和泉本町のそのお宅では、平成十七年三月誕生の女児のお食い初めを百十日目に行い、お膳には小豆より少し大きめな黒っぽい小石を三つ、小皿にのせて置いたそうです。石は女児の父親が伊豆美神社の本殿の前からいただいてきたもの。歯固めのいわれを、女児の百一歳の曾祖母から聞いたといいます。
 先月、一月十三日に行われた秋篠宮ご夫妻の長男、悠仁さまの「お箸初」は、お食い初めにあたる儀式です。白木の三方にのせた小豆粥、金頭(かながしら)という魚、そして特に、青い二つの小石のあったことが記憶に残りました。

中島惠子(狛江市文化財専門委員)