平成21年1月30日

 狛江市議会議長

  白 井   明 様

                                       社会常任委員会

                                       委員長 西 村 あつ子

              

                社会常任委員会所管事務調査報告書

   本委員会の所管事務について調査した結果を,次のように報告します。

                          記

 1 調査事件名

 障がい者の就労支援について

 2 調査の目的

 障害者自立支援法が施行され,就労支援の仕組みが大きく変化する中で,障がい者の就労支援が,適切かつ効果的に実施されるようにするため調査をすることとした。

 3 調査の結果

 本委員会では,障害者自立支援法の就労支援の仕組みや障がい者就労支援の現状等について市から説明を受けるとともに,市内の知的障がい者や精神障がい者の作業所,あいとぴあセンター内の喫茶室「夢」や障がい者の訓練施設等の運営状況を視察し,関係者から説明を受けた。また先進的な取り組みを行っている世田谷区立知的障害者就労支援センター「すきっぷ」,港区の㈱アイエスエフネットを視察した。そして今年度から開設された狛江市障がい者就労支援センター「サポート」を視察,関係者から説明を受けた。

 その結果,「すきっぷ」や㈱アイエスエフネットの視察では,障がい者の一般就労の機会が拡大され,個々の障がいに応じた適切な支援を行うことで,障がい者がその能力を発揮して自活できる給与を得られる可能性が広がっていることが明らかになった。また市内の作業所等の視察の中では,関係者から一般就労の機会拡大への期待が表明されるとともに,障害者自立支援法の施行による新体制への移行の中で,現在の通所者が今までどおり通所できるようにしてほしいとの要望も出された。さらに障がい者就労支援センター「サポート」では訓練の場の確保,就労の場の確保が課題となっていることが明らかとなった。

 以上のことから,本委員会は今後の狛江市の障がい者就労支援の進め方について,以下のように提言する。

  ⑴ 障がい者就労支援センター「サポート」の事業について

   狛江市社会福祉協議会が運営している就労支援センター「サポート」は,障害者地域自立支援センター事業の中で行ってきた就労支援の成果を生かし,また先進自治体の取り組みに学びながら進められている。今年度から常勤2名,嘱託2名の4名体制となり,以前から相談を受けていた人も含め,2008年8月現在労支援を行っている人が26名,そのうち13名が一般就労している方への職場定着支援である。

   視察の際に特に強調されたのが,障がい者が一般就労を行うに当たっての日常生活訓練や就労訓練の場の確保が最大の課題だということである。喫茶室「夢」やクリーン狛江を初め,市役所や民間事業所において安定的な訓練の場が確保できるように,また訓練後の就労の場が確保できるようにしていく必要がある。狛江市の場合,世田谷区「すきっぷ」のような授産施設と一体型になっていないので,そのハンディを乗り越える努力のため,さまざまな工夫と努力を行っていただきたい。

   市役所業務については,現在「福祉だより」の封入や宛名シール張りが福祉作業所に委託,あいとぴあセンター内の給食サービス事業者の協力で,実習の場の提供や食堂の清掃業務に4名の障がい者雇用が実施され,また府中朝日養護学校の2年生3名を福祉健康部がインターンシップとして受け入れるなどの取り組みが行われている。これらをさらに拡大して障がい者就労支援に結びつけていくために,市として全庁的に市役所業務を見直し,障がい者雇用に結びつく仕事を掘り起こし,訓練の場,就労の場の確保を進めるべきである。市役所など市内公共施設での仕事を精査し,就労訓練や就労の場として生かすとともに,障害者雇用促進法の趣旨を踏まえ,市役所内の障がい者雇用率を上げるよう努力すべきである。そしてこれらをより効果的に進めるために,市職員に対して障がい者の理解と障がい者雇用についての研修を行うなど,受け入れ体制も充実させてほしい。また,障がい者の就労支援について,市民向けの説明会や報告会を実施するなど,その社会的意義を広める取り組みを進めてほしい。

   また民間事業所における訓練の場,就労の場の確保のために,就労支援センターと連携しながら,市としても各種企業との連携を図りながら市内企業等へのPR,働きかけ等を進め,就労先の開拓を積極的に行っていただきたい。就労後も就職先への定期的な連絡や訪問などを行い,障がい者が就労を継続できるよう支援すること。また,企業が障がい者を戦力として活用していこうとしている状況を把握,研究し就労支援に生かしてほしい。

   IT産業が福祉作業所に発注する仕事の内容も把握し,IT関係などの新たな就労ニーズに対応できるようにするための研修を充実させてほしい。

   一般就労後のジョブコーチについては,当面専門機関からの派遣とされているが,障がい者との人間関係に配慮し,今後就労支援センター内に配置できるようにするとともに,障がい者本人と家族を合わせた形での相談体制,カウンセリング等の体制を強化してほしい。また,他区市の就労支援センターとの情報交換を行い,雇用先の開拓方法等を研究すべきである。

   また視察では,職員のスキルアップの必要性も強調された。これまでも就労支援に関する研修会にセンターの職員が参加してスキルアップへの努力が行われているが,市としてもこの努力を積極的に支援して,職員が自信をもって支援活動を行えるようにしてほしい。

  ⑵ 現在の作業所等への支援について

 市内の福祉作業所等の視察では,各作業所等が通所者の仕事の安定的確保や個々の障がいに応じた就労形態,社会生活への適応訓練など工夫を凝らして通所者の成長を促す多彩な事業を行っていることがわかった。同時にさまざまな課題を抱えていることも明らかとなった。 

<賃金と仕事の確保>

   1カ月の賃金は,精神障がい者の作業所では,カレーの販売やケーキの販売などで3,000円程度,知的障がい者の作業所では,ケーキの箱の組み立て(1箱3.5円)やスティックバルーンの袋入れ(1個2円)などの仕事で平均1万円程度であり,それをどう引き上げるかが課題となっている。また国内企業が生産拠点を海外に移す中で,仕事の確保が困難になってきている状況もあった。

 <福祉的就労>

   ある作業所では,通所している15名のうち7名が就労経験のある人で,人間関係で離職する人が多いとのことで,一般就労後の個別支援も課題となっている。また各作業所等で,仕事をしながら訓練することで,一般就労に結びついた障がい者もいる一方で,一般就労が困難な通所者も多いことが明らかとなった。これらの通所者が障害者自立支援法のもとでも,これまでと同じように通所できるようにしていくことが課題となっている。

 <就労継続支援B型への移行>

   精神障がい者の作業所「ワーク・イン野川」では,カレーの販売,カレーショップの開設等で,障害者自立支援法の就労継続支援B型への移行を望んでいることが明らかになった。ただ視察では,一律1割の応益負担で,通所者に毎月3,750円(お店を持った場合は月4,600円)の利用料負担がかかるとのことで,現状月3,000円程度の賃金の中で,この負担をどうするかが課題となっているとのことだった。

 <多障がい共同の事業>

   あいとぴあセンター内の「喫茶室「夢」」は,現在精神障がい者,身体障がい者,知的障がい者,難病患者の4つの障がい者団体が共同で運営しており,それぞれの障がいの特性に合わせた運営が工夫されている。またここは一般就労の訓練の場としても活用され,既に何人かがベネッセコーポレーションや小児科の受け付けなど一般就労についている。視察では今後も多障がいの共同でやっているという特色,よさを生かして運営をしていきたいという要望が出された。

  以上のことから,今後市として各作業所等の運営状況を十分把握しながら,障害者自立支援法のもとでも,安定した運営が継続できるよう最善の努力を行うよう求める。

 各施設との相談体制を進め,就労支援センター「さぽーと」との連携強化を図り,仕事の確保への支援や一般就労移行への個別の支援,各作業所等がこれまでどおり運営することができ,通所者がこれまでどおり通所できるようにするための支援など進めること。また法のメニューに沿った運営形態にスムーズに移行できるようにするための支援や障がいの違いを越えて共同で運営している喫茶室「夢」がその特色を生かして,これまでの運営が継続できるようにするための支援など進めていただきたい。

 これらの支援に当たっては,国・都の補助制度を把握し市の支援体制を明確にし,必要に応じて障害者自立支援法の各メニューを複合的に組み合わせる方式の採用や,市独自の財政支援を検討してほしい。また現場の声を国や都にも上げ,必要な支援を求めてほしい。

また各施設の状況を把握し,必要に応じた施設改善を進めてほしい。

本委員会の調査では,ひかり作業所等市内の通所施設で訪問しきれなかったところもある。また身体障がい者や難病患者の団体の声を聴取することができなかった。

 ぜひ市においては,これらの施設や団体も含めて,現場の要望を十分把握しながら,障がい者就労支援の充実に努力されるよう求めるものである。

 4 調査の経過

〇 委員会開催日

 平成19年 6 月20日 所管事務調査事項を決定

 平成19年 8 月 2 日 調査項目を決定

 平成19年 9 月14日 「障がい者就労支援についてと将来人口推計について?」の              資料に基づき市側より説明及び質疑応答

 平成19年11月 1 日 障がい者の就労支援についての質疑応答及び委員派遣の決定

平成19年12月14日 障がい者の就労支援についての質疑応答及び資料要求

 平成20年 1 月24日 「障がい者自立支援法における就労サービス」の資料に基づき市側より説明及び質疑応答

 平成20年 3 月11日 「小規模作業所等の現行と新法以降後の比較」の資料に基づき市側より説明及び質疑応答

 平成20年 6 月 3 日 組織改正に伴い所管事務調査事項の変更決定及び委員派遣の決定

 平成20年 8 月 4 日 障がい者の就労支援について委員間の意見交換

 平成20年 9 月19日 調査報告書作成に向けての協議

 平成20年10月30日 調査報告書作成に向けての協議

 平成20年12月12日 調査報告書作成に向けての協議

 平成21年 1 月30日 調査報告書決定

〇 委員派遣

 平成19年11月16日 委員7名を狛江第二福祉作業所,ワーク・イン野川,狛江第三福祉作業所,「夢」,狛江福祉作業所に派遣し調査

 平成20年 1 月29日 委員7名を世田谷区知的障害者就労支援センター「すきっぷ」に派遣し調査

 平成20年 7 月 2 日 委員5名を港区赤坂の㈱アイエスエフネットハーモニーに派遣し調査

 平成20年 7 月11日 委員7名を社会福祉法人 狛江市社会福祉協議会に派遣し調査