平成20年10月30日

 

 狛江市議会議長  

   白 井 明 様

 

                                         社会常任委員会

                                         委員長 西 村 あつ子

  

社会常任委員会所管事務調査報告書

                     

 本委員会の所管事務について調査した結果を,次のように報告します。

 

 記

 

1 調査事件名
  商業・工業の現状と課題について
 
2 調査の目的
  空き店舗の増加など市内の商工業の衰退が問題となっており,商工業の現状と課題を整理し,その振興をどのように進めたらよいか調査をすることとした。

3 調査の結果
  本委員会では,商工業振興に関する市の取り組みの現状の説明を受けるとともに,狛江市商工会を訪問,商工会の取り組みの現状について説明を受けた。また全国から注目されている「烏山スタンプ」事業を実施している世田谷区内の烏山駅前通り商店街を視察,振興組合理事長の桑島俊彦氏から説明を受けた。
 限られた期間内の調査であったが,この中で,狛江市の商工業振興の現状と課題を把握することができた。
 市内の商店街は,規模的に小さいものが多く,スーパー等大型店の出店や経営者の高齢化による廃業,リーダーの不在などで,その規模の縮小が進んでいる。商工会の会員数は平成7年(1995年)3月の1,204人から平成19年(2007年)12月の1,011人と年々減少し,脱会された方のうち廃業によるものが6~7割に達している。また一方,厳しい経営環境の中でも,多彩なイベントを企画するなど,近隣住民との交流を広げ,商店街に活気を取り戻そうと頑張っている商店街も出てきている。
 平成15年(2003年)3月策定した狛江市商店街振興プランでは「文化豊かに,住みよさ,便利さ,楽しさを演出する商店街づくり」を基本理念に,34項目の事業をかかげ,現在,そのうち11の事業が展開されている。いまこの商店街振興プランの見直しが進められているが,消費者と商業者の声を十分把握して,充実したプランを策定されるよう求めたい。
 このことを前提にして以下,個別事業について,いくつか提言する。

(1)商店宅配事業
  平成13年(2001年度)から高齢者世帯を対象に実施された事業で,当初,参加店10店舗,宅配数500件程度だったが,その後,対象を全世帯に拡大したことで,現在では,参加店33店舗,宅配数2万件余と大きく発展している。この事業は,市内全域を配送エリアとする小さな狛江ならではのユニークな取り組みであり,根気良く育てていく必要がある。今後の課題としては,現在の参加店の多くは従来から宅配サービスを実施していたところであり,その拡大が求められている。
 市と商工会が連携して,お客様の要望を吸い上げ,事業の改善に努めるとともに,成功事例などのPRや個別の働きかけなど,参加店の拡大,利用者増を図ってほしい。特にコマエリアとの連携も強化してほしい。 

(2)コマエリアの充実
 平成19年(2007年)3月開設したコマエリアには127事業所が参加,アクセス数は5万3,000件を超えている。ページの更新をこまめに行い,売り上げを伸ばしている店舗もある。また指導員が各店を回ってページの更新の方法を教えるなどの取り組みも行われている。そして,このサイトにかかわる委員会も設置され,ほぼ月一回のペースで検討が重ねられている。
 コマエリアの今後の課題としては,ページの更新を行っている掲載者が全体の3分の1程度であり,これを引き上げるとともに,掲載者の拡大を促進していく必要があること,また現在は,携帯電話からアクセスできないが,アクセスを可能にすることで,利便性を飛躍的に向上させること,さらには掲載者が,自らの商品・サービスに付加価値を加えることで商品とお店の魅力を光らせお客様の要望にも応えていくこと,そして商店街としてのニュースや掲示板機能を充実させることや,市民への周知を図ることなどがある。
 商工会ではこの課題に応えるために,シナジースキーム事業基本計画書を作成,都の補助を受けて,「我が街を育て,慈しむ善循環創り」をキャッチフレーズに,コマエリアの拡充に取り組んでいる。本事業では,携帯電話からのアクセスを可能にするとともに,「わっこ」との連携などによる多彩な情報提供,市民同士がウェッブ上で交流できる場の提供,宅配サービスの取り込みなど,コマエリアの抜本的充実が図られる。ぜひ市としてもこの事業の推進を支援してほしい。  

(3)市内共通スタンプ制度の創設
 商工会では現在,QRコードを活用した市内共通スタンプ制度について検討を進めている。商工会が4年前に検討したときは,参加店舗の経済的負担が大きく頓挫してしまったが,今回のQRコードを活用したスタンプ制度は,参加店舗の負担は,事業負担金や保証金を除けば,QRコードを加工したシャチハタ式スタンプ(2,500円)の導入のみである。現在,商工会内部の合意形成に努力中とのことだが,これが実現できれば,市内どこで買い物をしてもポイントがついてくることになり,消費者の利便性を高めることができる。また市内商店街の連携を強めることで,このスタンプに高い付加価値を加えることもできる可能性がある。
 ぜひ市として商工会と連携して,市内共通スタンプ制度の創設への支援を進めてほしい。またこのスタンプ制度の成功のためには,スタンプに多様な付加価値を持たせることが必要である。お買い物だけでなく,商店街や駅周辺の清掃への協力でボランティアポイントがもらえるなど多彩なポイントを用意したり,スタンプで,コミュニティバスに乗れたり,市の窓口での支払いができたり,スタンプに地域通貨的機能を持たせるなど,さまざまな付加価値を持たせる方法を研究してほしい。 

(4)こまえ元気わくわく事業の推進
 今年度,狛江スイーツ逸品コンテストという形で始まった「こまえ元気わくわく事業」は,各個店が大型店等他店にない逸品,地元商店が自信をもって勧める「お勧め品」をもつことにより,個店の魅力を引き出し,商店街の活性化につなげていくものである。市として一店逸品(特殊な技術等含む)を認定推奨して,認定された商品,技術等を市広報やホームページ,マスコミ等メディアを通じて積極的にPRしていくことは市内商工業の振興につながり,この事業の積極的推進を求めたい。
 商工会が最初にまとめた「一店逸品で狛江が元気」というシナジースキーム基本計画書は,都の補助は得られなかったが,この事業を進める上での指針となる。各個店が逸品を生み出すためには,個店の運営方針と消費者のニーズがマッチしているか等,商品,品揃え,付加サービス等,広範囲にわたって点検,見直しが求められる。そのために,市と商工会が連携して,各個店に専門家を派遣するなど経営改善普及事業を積極的に進めていただきたい。また逸品を誕生させる上で,個店同士の本音の話し合いが重要であり,それが商店街としての共同意識を向上させることにつながる。このことを意識した実施体制作りを進めていただきたい。 

(5)空き店舗対策
 市が平成17年(2005年)に実施した商店街空き店舗状況調査では,市内21商店街で72店の空き店舗が確認され,一部商店街では二桁を超える空き店舗が確認された。空き店舗対策は経済動向ともかかわり,容易ではないが,空き店舗の顕在化は商店街の衰退のバロメーターでもあり放置できない。
 新規創業者への支援や後継者対策を軸にしながら,アンテナショップ等の誘致,一定期間の家賃補助,障害者団体等の出店への支援,子育て広場や商店街内の憩いの場,文化的スペースとしての活用,周辺大学と連携して大学生の実習の場,大学の地域貢献の場としての活用,空き店舗の定期的調査,不動産業者との連携もはかり空き店舗情報のインターネットによる情報発信など,空き店舗をなくすための,多様な取り組みを検討してほしい。
 今回は時間の関係で工業部門についての調査が十分できなかったが,商業振興については以上のような提言をまとめることができた。狛江市は,市域面積,人口規模から,市域全域を対象とする施策が,効果的に実現しやすい環境にある。また市と市民,商工・農業者の交流・協働が発展しやすい環境にある。これを生かして特色ある商工業振興にとりくんでいただきたい。現在策定中である商店街振興プランでは,更なる充実した計画になるよう充分な調査,検討をおこなうこと。また,商工会とも連携し,狛江市として新たな商工業の発展が図られるよう,推進すること。

【調査の経過】
商工業支援について
〇委員会開催日(合計11回開催)

平成19年6月20日   所管事務調査に決定,今後の進め方について協議

平成19年8月2日   特定事件継続調査(産業振興及びその対策について)

平成19年9月14日   所管事務調査(産業振興及びその対策について,産業振興中 商
業・工業の現状と課題について)説明・質疑(説明員,市民部長,産業生活課長補佐) 

平成19年11月1日   特定事件継続調査(産業振興及びその対策について)説明・質疑(説明員,市民部長,産業生活課長補佐)

平成19年12月14日    所管事務調査(産業振興及びその対策について産業振興中 商業・工業の現状と課題について)説明・質疑(説明員,市民部長,産業生活課長補佐,産業生活課副主幹)

平成20年1月24日   特定事件継続調査(産業振興及びその対策について)

平成20年3月11日   所管事務調査 (産業振興及びその対策について,産業振興中 商業・工業の現状と課題について)

平成20年6月3日   所管事務調査 (産業振興及び消費者施策について,産業振興及び消費者施策中 商業・工業の現状と課題について)説明・質疑(説明員,地域活性課長)

平成20年8月4日   特定事件継続調査 (産業振興及び消費者施策について)

平成20年9月19日   所管事務調査 (産業振興及び消費者施策について)

平成20年10月30日    特定事件継続調査 (産業振興及び消費者施策について) 

〇委員派遣 

  平成20年2月13日 委員7名を狛江市商工会,世田谷区烏山商店街へ派遣し,調査