狛江市が医師会と協定して正式に休日診療を始めたのは昭和51年1月1日のことである。これより遡ること8年前の43年から医師会は独自で休日診療を実施していた。これは多摩26市の中でも比較的早いスタートであったが、あくまでも医師会独自の事業であったため、市民への事前周知はなされず時間も午前中だけであった。市民への対応は、医師会から予防衛生課に当番表が送られてきていたので、それを宿日直に預け、問い合わせがあった場合にだけ教えることとしていた。
 広報で市民に周知しなかったのは、本当の急患は数えるほどで、公にすると急患以外の人も来てしまうし、公で行うとなると重患の収容施設が必要となる。また、当番医に変更が生じることがあるな
どを考慮したからであった。
 休日診療がスタートした51年当時の人口は約68、500人。一時期の人口急増はおさまったものの、それでも前年比3パーセントぐらいは伸びており、全人口の2割が転入出者のため、かかりつけの医師を持たない人が多く急病になったときの不安があった。また、他の自治体との比較から、市で実施する休日診療への期待は年々高まってきていた。
 このため医師会と協議を重ねる一方、48年からは休日診療の問い合わせ件数と市民の要望等の把握に努めた。二次施設としては慈恵医大に休日のみの空床ベッドを内科外科の各1床ずつ無理にお願い
して確保した。そして、医師会と問題点の調整を図る中で、医師会としても北多摩医師会から独立して法人格を取得する準備に入る都合もあり、実施方法は輪番制(発足当時は24医療機関)、時間は半日から一日に、当番医は広報で広く市民に周知するということで、市と医師会との協議が成立、51年に実施することになる。
 初日の1月1日、正月早々から休日診療に来るような不幸な人は少ないに越したことはない。しかし、永年の協議の末にこぎつけた新事業でもある。そんな複雑な思いの中、第1日目の当番医を訪ね
た。
 ところが、待合室には人があふれていた。2日目、3日目も同じだった。以降、医師会の先生方には大変なご苦労をかけ、現在も引き続き輪番制で休日診療をお願いしている。
 歯科の休日診療も、52年10月、東京都と都歯科医師会との間で、休日診療に関する契約で締結されたのを受け、同年11月からは都北多摩歯科医師会が傘下13歯科医師会を4ブロックに分け実施した。
 58年4月には、狛江市歯科医師会と調布市歯科医師会が両市民を対象に休日診療を開始し、年間総休日の4分の1強を狛江市の当番として行った。平成元年4月からは、市と狛江市歯科医師会との協議が整い、狛江市独自で休日診療を行うようになり、ともに地域医療の支えとなっている。