弁財天池の白蛇
 
泉龍寺の弁天池には、弁天様のおつかわしめの白蛇がすみ、変わりごとがあると姿を見せるとか、泉の工事のときに出てきたとか、言い伝えられてきた。寺の縁起にも、弁天池の神聖なことを物語る話としてある。
 江戸時代の初めの夏の暑い盛りの日、寺の法会(ほうえ)に集まった僧のうち何人かが、池に入って涼み、戯れたので、水がけがれて濁ってしまった。すると、にわかに池の水が熱湯のようになり、驚いた僧たちが池から出たところ、弁天の島が震動して白蛇が現れ、とぐろを巻いた。案石という僧が竹の杖でたたこうとしたが鼻血を出してひっくり返り、白蛇は水中に消え、案石は夕刻絶命した。以来、池をけがす者はなくなった。

 伊豆美神社の大蛇
 伊豆美神社でお百度参りをしていた人が、何回目かに丸太をまたいで何気なく先の方を見たら、大蛇の頭だった。六郷用水をまたいでしまうほどの五間(約九メートル)もあるような大蛇だったという。
 伊豆美神社に、今はないが大きなマツの御神木があって落雷で裂け、ウロができた。倒れないようにするため、ウロの上方にかめを伏せ、根元をコンクリートで固めた。すると氏子の毛塚鈴田さんの夢枕に、そのウロにすむ大蛇が現れ、息ができないで苦しいよ、と訴えた。さっそくコンクリートの一部を欠いてやり、やがて大蛇を祀る(まつ)小さな石の祠(ほこら)を建てて、その名を妙玉郷社(みょうぎょくごうしゃ)大善神とした。妙玉様といわれている。

 田中の池の大蛇と御台橋の大蛇
 和泉の田中の池(今の児童遊園のある所)には大蛇がすんでいた。釣りに行ってそれを見た人が、熱病にかかってしまったということだ。
 野川にかかっていた御台橋の下には、大蛇がすんでいて、人をおどかしたりしたそうだ。秋になると川を上って佐須(調布)の柏野の山の辺りで冬眠し、春になるとまた下ってきたという。