ツバナまき
 春になると、子どもたちは、多摩川の土手でツバナを抜いて食べたり、「ツバナまき」をしたりして遊んだ。この辺りではチヤガと呼んでいる茅(ちがや)は、葉が出る前に、花が銀白色の穂になって咲く。この花穂をツバナといい、白い穂になる前の若いツバナを抜いてなめると、ちょっぴり甘い。柔らかなものは食べもしたが、なめたり噛んだりして甘味を楽しんだ後、ツバナまきをした。
 みんながツバナを二、三本ずつ出しあい、これを、じゃんけんで勝った者が片手に持ち、ちょっとひねって、ぱっと地面にまき散らす。ツバナはさまざまに交差して、三角や四角の囲みができる。そのいちばん大きな囲みの中に、自分の手持ちのツバナが触れないように立て、立てた本数だけ相手のツバナを取る。うまく囲みができなければ失格なので、手をひねるように投げるとか、工夫をこらした。物を散らかしたりすると、「ツバナまきみたいに散らかして」と、親に言われたというお年寄りもある。

 つこつこ
 これは、細い竹筒と、クワかハチスの枝で作った搗(つ)き棒、という簡単な道具を使う遊び。竹筒の中に、シドミ(野ボケ)の開ききらない花と梅干しとを入れ、手に持つ部分だけ皮を残してむいたハチスかクワの棒で、つこつこ搗く。白い棒が赤く染まってくるので、その染まりぐあいを比べあい、すっぱい汁のしみ込んだ棒をなめて楽しんだ。遊びの名の「つこつこ」は、棒で搗くときの音によるものらしい。

 草ずもう
 スミレの別名はスモウトリグサ、スモウトリバナ。花と花をからみ合わせて引っ張りあい、先に切れた方が負け。オオバコの花茎や葉柄、松葉、カギッチョ(バッパギンコとも。山ミズキ)の枝でも。

 花鉄砲
 ホタルブクロの花を上向きに軽く握って、もう一方の手で上から勢いよくたたいたり、口にくわえて息を強く吹き入れたりすると、トッカンと音を立てて破れる。この花をトッカンバナとも呼んでいた。